アベイユ ブックス

菊池さん夫妻 インタビュー

 

 2017年6月、ちょうど「にわのわ」「まちのわ」のイベントのころに京成佐倉駅から佐倉市立美術館へ向かう坂の途中で古本屋を開店されたアベイユ ブックスさん。開店してそろそろ1年が経つというタイミングで菊池さん夫妻にお話しをうかがいました。

この1年で積み重ねてきたもの

 

― もうすぐ1年が経ちますが、いかがですか。

 

菊池さん(夫)(以下「夫」と記します) 最近になってようやく近所の高校生がお店にきてくれるようになりました。トーベ・ヤンソンの『ムーミン』やルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』といった、うちが大事にしている分野の本も手にとってくれています。

 

菊池さん(妻)(以下「妻」と記します) これから手紙社さんの文房具や雑貨も扱って、文房具にもっと力を入れていこうと思っています。1年近く経ってようやくまちに馴染んできたのかもしれません。

 

― 菊池さんは文房具屋さんをされていたこともあるので、本だけではなく文房具も得意な分野ですよね。奥さんはもともと新刊書店で働いていらしたとうかがいました。本屋を始めることは前から考えていたのですか。

 

 結婚する前から二人で本屋をやりたいという話はずっとしていたのです。ただタイミング的なものもあってなかなか始められなくて。初めは新刊のセレクトショップを考えていました。小さな出版社で直販してくれるところを探したり、魅力ある新刊本を展示会などで探したりしていました。同時に勉強のためにと個性のある本屋さんを探していると古書店に行き当たりました。それで新刊、古書の区別なく魅力ある本を収集するようになって、同じ本ですから両方を扱いたいと思うようになっていきました。

 

 結婚前からなので、20年以上二人で本屋のことを話し合ってきています。

 

 いっしょに文房具屋をやっていたときもあったのですが、倉庫でよく本屋の事業について話し合っていました。

 

― それが二人のあいだのメインテーマなのですね。

 

 今でもそうです。だから夫婦と思われないようなのです。飲食店に二人でいくと、よく「別会計ですか」と聞かれますから。

 

― (笑)

 

 娘たちに恋人同士に見えるのかしらと聞いたら、違うよ、同僚に見えているんだよって。

 

― お二人は本屋をやるために組み合わされたようなご夫婦だと感じます。

 

 開業してからは摩擦もありますけれど。開業する前はいい距離感で、まあそうだよねと言っていればよかったのですが。

 

― 意見がぶつかったときどちらかが折れないといけないですからね。二人の間で役割分担のようなものはあるのですか。

 

 値段の交渉は私よりも上手なのでまかせています。新しい本を見つけにいったり、文房具の展開会にいったり、新しいものを見つけるのは私の方が得意かもしれません。

 

― このお店の魅力はやはり絵本だと思うのですが、これはどのように決められたのですか。

 

 お店には中心となる本が必要だと思っていました。何を中心にしていこうかと10年くらい毎日悩んで、いろんな古書店を回ってこのお店はこれが中心なんだというものを確認したりしていました。私たちの子育ての経験も影響したと思います。最終的に絵本をこのお店の中心にしようとなりました。

 

― 例えばこの本ですよね。これは?

 

 オズボーン・コレクションといいます。イギリスの18世紀から19世紀末までの古典的絵本の有名なコレクションですが、そのなかから30点あまりを選んで復刻されたシリーズです。

 

 素材を含めて忠実に再現されています。

 

 自分が子供の頃にこういう童話を読んでいたので、見た瞬間にこれは素晴らしいと思って集めはじめました。うちのお店では民話や伝承など失われていくものを残していきたいと思っています。

 

 余力があれば日本の民話も集めていきたいですね。失われていくものを残していくことが古書店のひとつの役割だと思うのです。

 

 タラブックスというインドの絵本は手漉きでつくられていて工芸品のようです。こうした手仕事の本も集めていきたいです。あまり目にできないものを地方で見ることができるようになれば、皆さんにも楽しんでもらえると思っています。

 

―たしかにこのお店にある本は、図書館にも新刊書店にもないものばかりですね。

 

 時間も場所も自由なところへ意識を飛ばせるのが、古書店のおもしろさだと思っています。

 

― 買取も多くなってきているようですね。

 

 今日も茨城の方から買取をしてきたところです。ネットでうちのお店を見て連絡いただいたようです。本屋では棚の見せ方が話題になることがありますが、今の本屋は棚だけではなくSNSにあげる内容やホームページも含めトータルの見せ方が求められていると思います。

 

 自分の本を大事にしてくれる人に譲りたいということでネットで古本屋を探して、うちを選んでくれたようです。

 

 こういう本は時間をかけて大事に売りたいですね。遠くの方からの買取の連絡も結構あります。うちのお店だったら本を大事にしてくれる人に届けてくれるだろうということで選んでいただけたのだとしたら嬉しいですね。

 

― そうした買取の連絡が遠方から来るのも、1年間のアベイユさんの情報発信の蓄積の結果ですね。ところで本屋さんになるのに大事な資質ってなんでしょう。

 

 人に本を勧めたいという欲求と収集癖、両方が必要だと思います。新刊書店と古書店で一番違うのは収集癖が必要かどうかだと思います。本のことを考えてまちを歩いていると不思議と考えていた本と出会います。

 

 でもそれを集めるだけではなくてお店としては売らないといけないわけですから。それは好きな人の手にわたることであると同時に…。

 

 いい本ほど売れていきますからね。ちょっとさびしく思うときがあります。

 

 本が売れて悲しんでいるんです。売れるのは喜ばしいことだって言うんですけど。

 

 いい本を見つけて仕入れる大変さもありますから。

お店がなろうとする形を探す

 

 最近、お店自体がひとつの人格をもっているように感じるときがあります。この本はお店がほしがっているんじゃないかと。

 

― 「映画は映画になろうとする」と言っていた映画監督の言葉を思い起こしました。お店にもなろうとするお店の形があるということでしょうか。

 

 それを実感します。二人でつくっているお店ですが、お店に使われているのかもしれません。

 

― 本当の主人はお店なのかもしれないということですね。お店の人格をつくっていくのは何なのでしょうね。

 

 わからないですね、それは商売の神様だという人もいますけれど。

 

 本の山のなかで、ある本が光っているように思うときがあります。これだよって。

 

― 最後に、それぞれ一言お願いいたします。

 

 古書の魅力は、その本が作られた当時の人々の暮らし、思い、文化など、時代を超えて身近に手軽に触れることが出来ることです。当店は絵本にも力を入れていますが19世紀頃の海外絵本には沢山の素晴らしい装丁の本があります。復刻本ですがとても良く作られていて、当時の紙、印刷方法、色彩を忠実に再現した美しい本になっています。こちらをぜひお客様にご覧いただきたいです。

 

 中古本はまた古書とは違って、本を日常的に楽しむツールとして有効だと考えています。どなたかが不要となった本を、当店を介してまた他の方がその本を求める。そのサイクルが面白いですね。意外な本との出会いが中古本の魅力ですし、純粋に読みたいと思った本を気楽に手に取って読んでいただきたいです。お客様に育てていただきながら、少しずつ成長していけるお店でありたいと思っています。今の目標は、とにかく長くお店を続けていくこと、それに尽きますね。

 

 今日買いにきてくれた高校生が大人になって、子供をつれて買いにきてくれるまで続けられたらと思います。

 

 

古書 アベイユ ブックス abeilleboks

メールアドレス: info@abeille-books.com

千葉県 佐倉市鏑木町1151-15

​​営業時間:火 - 土: 11am - 7pm

​​定休日:毎週 月曜日 /日曜日(日曜日は不定休です)

 (イベントなどの関連から、営業時間は不定期に変わることがございます。ウェブページにて告知いたしますのでご了承くださいませ)

https://www.abeille-books.com/

 

(聞き手 ブックリンクサクラ 河村淳司)

 

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